2012年4月4日水曜日

テルミン - Wikipedia


テルミン(ロシア語:Терменвоксチルミンヴォークス)は、1919年にロシアの発明家レフ・セルゲーエヴィチ・テルミンが発明した世界初の電子楽器である。ロシア語や英語では「テルミンの声」という意味のテルミンヴォクスТерменвоксThereminvox)とも呼ばれる。英語ではThereminとつづられる。これは発明者が用いたフランス語風の表記に由来しており、「テレミン」もしくは「セレミン」のように発音される。「テルミン」は日本語特有の形である。

[編集] 構造と特色

テルミンの最大の特徴は、テルミン本体に手を接触させることなく、空間中の手の位置によって音程と音量を調節することである。テルミンの本体からは、通常2本のアンテナがのびており、それぞれのアンテナに近付けた一方の手が音程を、もう一方の手が音量を決める。わずかな静電容量の違いを演奏に利用するため、演奏者自身の体格・装身具などによる静電容量の違いをはじめ、演奏環境に依存する部分が大きく、演奏前に綿密なチューニングを必要とするなど、安定した狙った音階を出すには奏者の高い技量が要求され、演奏には熟練を要する。

一般的なテルミンの音色は純粋な正弦波に近いため、ミュージックソーに似ている。「暖かく、優しい」、「癒しになる」という人もいる一方で、そのゆらめく音色から不安や恐怖感が生まれ、恐怖映画やSF映画の効果音としても使われてきた。


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[編集] テルミンの原理

テルミンの音程を生成する部分にはコルピッツ発振回路のようなコンデンサをもつ高周波の発振回路が2つ組み込まれ、これらはわずかに違う周波数を持つよう調整される。これらの発振回路の出力を組み合わせ、それが発生する低周波の可聴域のうなりを音に変換するのがテルミンの原理である。一方の発振回路のコンデンサ部分はアンテナの1本に接続されており、アンテナに手をかざして手とアンテナとの間の距離を変えると、静電容量が変化して発振周波数が変わる。これにより、うなりの周波数も変化して音程も変わることになる。もう一方のアンテナによる音量の変化も、同様に2つの発振器と静電容量変化により発振周波数が変わることを利用している。原理が簡単なため、電子楽器初期のころは雑誌に自作の記事がよく発表� ��れた。

[編集] テルミンの歴史

テルミンは、元はロシア政府が後援した近接センサー(proximity sensor)研究の産物だった。ロシア人の若手物理学者レフ・セルゲイヴィッチ・テルミンはロシア内戦のさなかの1919年に非接触式の電子楽器テルミンを発明した。モスクワでの電子学会で好意的な反応を得た彼は、ソ連の指導者ウラジーミル・レーニンの前でテルミンを披露した。レーニンは非常に感銘を受け自らもテルミンの演奏方法を習った。レーニンの発注で600台のテルミンが製造されソビエト連邦各地に販売され、テルミン自身も、ソ連の最新技術と電子音楽の誕生を披露するために世界各地へ派遣された。ヨーロッパ各地で詰め掛けた観衆の前で演奏を披露する公演旅行の後、テルミンはアメリカ合衆国へと向かい、1928年に特許を取得し、大手電機会社RCAにテルミンの製造販売権を売った。


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RCAが製造した「RCA Thereminvox」はアメリカを含む世界の聴衆を魅了したが、1929年から始まった世界恐慌の影響もあり商業的には成功せず、数百台しか販売されなかった。この時期のテルミン奏者としては、クララ・ロックモア(Clara Rockmore)が知られる。彼女は全米で公演し、しばしばポール・ロブスンとも共演した。1938年にはテルミン博士はアメリカを去りソ連に戻ったが、この理由については望郷説と誘拐説があり今も不明である。以後テルミンは強制労働に従事したり軍事研究に従事したりと数奇な人生を送り、ペレストロイカ後にようやくアメリカを再訪しクララ・ロックモアらとも再会している。

第二次世界大戦後にはテルミンは次第に忘れ去られた。1960年代以降はモーグ・シンセサイザーなど新たな電子楽器の登場もあってテルミンの忘却に拍車をかけた。その一方で、アルフレッド・ヒッチコック監督の1945年のサイコスリラー『白い恐怖』、ロバート・ワイズ監督の1951年のSF映画『地球の静止する日』など、恐怖映画やSF映画の音楽に不安定なテルミンが起用されている。また後述するようにレッド・ツェッペリンによる使用などで、効果音を出す装置としてテルミンは使われ続けた。

1990年代以降、テルミンは再び見直されモーグによりテルミン製造が再開された。テルミン博士の生涯を描いたドキュメンタリー映画の公開、プロやアマチュアによる演奏の機会の増加、様々な形態のテルミンの製造販売などテルミンは静かに広まり続けている。

[編集] テルミンを使った音楽

テルミン専門の演奏家は数少ないものの、熱心な愛好者が存在する。シンセサイザーのパイオニアであるロバート・モーグもテルミンに熱中したことで知られ、モーグ社でもテルミンを開発・販売を行っている。

ポピュラー音楽では、トッド・ラングレンやコーネリアス(小山田圭吾)、高野寛、今井寿などのミュージシャンにもしばしば利用されている。ビーチ・ボーイズの「グッド・ヴァイブレーション」で使われたテルミンの音のような楽器は、ポール・タナーにより作られた「エレクトロテルミン(タナリンとも)」である。また、菊池俊輔は「仮面ライダー」などのTV番組の楽曲にテルミンを使用している。


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一気にその名が知られたきっかけとなったのは、英国のハードロックバンドレッド・ツェッペリンの代表曲の一つとも言われる「胸いっぱいの愛を」の間奏の部分で、ギタリストのジミー・ペイジが導入したことだろう。実際、ライブパフォーマンスを見てテルミンを知った者や、それに影響されて導入した音楽関係者やミュージシャンも多い。

クラシック音楽での使用例は多くないが、この楽器を用いた初期の例としてエドガー・ヴァレーズの「エクアトリアル」(実用度の高いオンド・マルトノで代用される場合が多い)、チャールズ・アイヴズの「交響曲第4番」、パーシー・グレインジャーの「フリーミュージック第1番」(4つのテルミンのための)、「フリーミュージック第2番」(6つのテルミンのための)、アニス・フレイハンの「テルミン協奏曲」などが挙げられる。

アルバム「電子音」は中村八大、冨田勲のカバーを中心に、モーグ社製Etherwave Theremin Proの音色制作者のひとりでもある井伊英理が日米で発表。モーグ・テルミンとモーグ・シンセサイザーだけで制作された。この作品はCDに加えて、テルミン楽曲として世界初となる着うたでの配信も行なわれている。

[編集] テルミンの機種

現在、日本国内で入手可能なテルミン
  • TAITO テルミンミン
  • TAK THEREMIN LAB EWINDS-S
  • MOOG ETHERWAVE
  • 学習研究社 テルミンPremium
過去の代表的機種
その他のテルミン
テルミンと類似した機構を持つ楽器/エフェクター類
テルミン」(Theremin — An Electronic Odyssey
1993年公開の、スティーヴン・マーティン監督によるドキュメンタリー映画。晩年のレフ・テルミンが出演している。
ザ・デルマトロン
電子音楽家ブルース・ハーク (Bruce Haack) が使用した楽器。自分と相手に電極をつけて、皮膚に触れることによって演奏する。
マトリョミン
世界的テルミン奏者である竹内正実が開発した小型テルミン。マトリョーシカ人形にテルミン、およびスピーカを内蔵する。ボリュームアンテナが無く休符の表現ができない事から海外ではテルミンに属した楽器ではないと議論されている。
SP-555
ローランド社製のサンプラー。モノフォニックシンセサイザーとDビーム・コントローラ(光学的に手とセンサーの距離を検出する機構)を採用しており、テルミンのように演奏する事が可能。
Simple Media Spook Keysシリーズ
ソフトウェア・シンセサイザーテルミンがフリーウェアとして入手可能。タッチパッドやマウスで操作するほか、通常のMIDIキーボードでも演奏可能。また、ゲームパッドからMIDIメッセージを送信できるソフトウェアによってUSBゲームパッドやネジコン(※対応している変換機器が必要)などのゲームパッドでも演奏が可能である。
「大人の科学マガジン」
学習研究社が刊行している付録つき雑誌。2007年9月28日発売のVol.17で「テルミンmini」が付録として発売された。
のだめカンタービレ
クラシック音楽界を題材にした二ノ宮知子作のコミック。第18巻に「ハンガリー人の女性音楽大生ヤドヴィガ」がテルミンを演奏するシーンがある。
BLACK OUT
テレビ朝日系にて放送されたSF犯罪ドラマ。ほぼ毎回、劇中で主人公がテルミンを演奏するシーンがあり、据置型・携帯型の2種類が登場する。

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